これまでの連載記事では、AIに「ウォーレン・バフェットの投資思考」を学習させ、日本株のスクリーニングから詳細な財務分析までを行わせる検証プロセスを公開してきました。
しかし、実際に皆さんが自身のAIで分析を行う際、過去の記事を行き来してプロンプト(指示文)を探すのは非効率です。
そこで本記事では、検証過程や細かな解説をあえて省略し、「実務でそのまま使えるプロンプト」だけを実行順に集約しました。
-
基準定義: バフェットの思考回路をAIにインストールし、銘柄を発掘する
-
裏付: 決算書(PDF)を読み込ませて事実確認(ファクトチェック)を行う
-
深掘: 「調整後EPS」などの独自指標を精密に計算させる
この順番通りにコピペして実行するだけで、私が検証で構築した「AI専属アナリスト」を、あなたの手元で即座に再現可能です。
日々の銘柄分析や決算シーズンの「辞書」としてご活用ください。
H2:Step 1:バフェット流スクリーニング(基準定義と銘柄発掘)
AI投資分析の第一歩は、AIの思考回路を「ウォーレン・バフェット」に書き換え、市場全体から有望な銘柄をフィルタリングすることです。
単に「おすすめの日本株を教えて」と聞くだけでは、AIは時価総額の大きい有名企業をランダムに挙げるだけです。
そこで、私がAIとの対話を通じて確立した「7つの厳格な選定基準」を与えます。
プロンプトのポイント
このプロンプトには、以下の「バフェットの投資哲学」を具体的な数値として埋め込んであります。
-
収益性: ROE 10%以上(借金による嵩上げを警戒)
-
財務: 自己資本比率 50%以上(※インフラ・金融は特例あり)
-
割安性: PER 15倍以下 / PBR 2倍以下
-
永続性: 30年後も存続する「経済的な堀」の有無
【実行】スクリーニング用プロンプト
以下のテキストをコピーし、AI(ChatGPTやGemini)に入力してください。
これだけで、数千ある上場企業の中から、バフェットの眼鏡にかなう「お宝候補」が5つ提案されます。
あなたは「ウォーレン・バフェット」です。
日本の全上場企業の中から、以下の「厳格な7つの選定基準」をすべて満たす、投資企業候補を5つ発掘し、提案してください。
### 【厳格な選定基準(スクリーニング条件)】
**1. 収益力の持続性(重要)**
* 過去5年間、ROE(自己資本利益率)が継続的に10%以上であること。
* 一過性の利益ではなく、ビジネスの構造的な強さによるものであること。
**2. 財務の健全性(業種別ルール)**
* **一般企業:** 自己資本比率(純資産比率)が50%以上であること。
* **インフラ・鉄道・不動産:** 自己資本比率が30%以上であること。
* **銀行・保険:** 自己資本比率の条件は適用しないが、業界最高水準の財務健全性を持つこと。
**3. 成長トレンド**
* EPS(1株当たり利益)が過去5年、上昇トレンドにあること。
**4. 割安性(バリュー)**
* PER(株価収益率)がおおむね15倍以下であること。
* PBR(株価純資産倍率)がおおむね2倍以下であること。
**5. 事業の単純さと永続性(30年ルール)**
* 「中学生でも理解できる」シンプルなビジネスモデルであること。
* 30年後の未来(2055年)でも、その企業の製品やサービスが変わらず使われていると確信できること。
**6. エコノミック・モート(経済的な堀)**
* 他社が容易に参入できない「ブランド力」「圧倒的なコスト優位性」「高いスイッチングコスト(乗り換えコスト)」のいずれかを有していること。
### 【出力形式】
選定した5銘柄について、以下の形式でレポートしてください。
---
**銘柄名:[コード] [企業名]**
* **業種:** [業種名]
* **主要指標:** ROE:約〇% / PER:約〇倍 / PBR:約〇倍 / 自己資本比率:約〇%
* **バフェットの視点(定性分析):**
なぜこの企業に「経済的な堀」があると感じたのか?30年後も生き残る理由は何か?バフェットの口調(「〜だね」「〜思うよ」)で解説してください。
* **リスク要因:** 投資するにあたっての懸念点は何か。
H2:Step 2:ファクトチェック(決算書PDFによる裏付け)
Step 1で「お宝候補」が見つかっても、AIが学習しているデータが古い場合や、数値を読み間違えている(ハルシネーション)可能性があります。
そこで、企業が発行する「一次情報」をAIに直接読み込ませ、Step 1で評価した「高収益・高財務・成長」が事実であるかを厳格に審査します。
手順
-
対象企業の公式サイト(IRページ)から、最新の「有価証券報告書(過去の実績用)」と「決算短信(直近の予想用)」のPDFをダウンロードします。
-
AIのチャット欄にある「クリップマーク(または+ボタン)」から、2つのPDFを同時にアップロードします。
-
以下のプロンプトを入力してください。
【実行】裏付け分析用プロンプト
このプロンプトは、過去の正確な実績と、最新の会社予想を一つの表に統合し、成長トレンドを可視化するためのものです。
あなたは厳格な証券アナリストです。
添付した「有価証券報告書」及び「決算短信」を読み込み、以下のデータを抽出・分析してください。
### 【制約条件(厳守)】
1. **ソースの限定:** 必ず添付ファイル内の数値のみを使用すること。あなたの記憶や推測は一切含めないでください。
2. **データの統合:** 過去の実績は「有価証券報告書(主要な経営指標等の推移)」から、直近の予想は「決算短信(業績予想)」から引用してください。
3. **正確性:** 単位(百万円、円など)を正確に表記してください。
### 【抽出項目】
以下のデータを表形式でまとめてください。
* 対象期間:2021年12月期から2025年12月期まで(※2025年12月期については会社予想値)
* ROE(自己資本利益率) ※2025年12月期を除く
* 自己資本比率 ※2025年12月期を除く
* EPS(1株当たり利益)
### 【分析依頼】
作成した表に基づき、Step 1の基準(ROE10%以上、自己資本比率50%以上、EPS成長)を満たしているか、判定してください。
※注記:対象期間の修正について
プロンプト内の「対象期間(例:2021年12月期〜)」は、分析したい企業の決算月や、現時点での最新年度に合わせて適宜書き換えてください。
例:3月決算企業の場合 → 「2021年3月期から2026年3月期まで」など
H2:Step 3:ディープダイブ(独自指標の精密計算)
Step 2で公式データの裏付けが取れましたが、さらに一歩踏み込みます。
企業の真の実力を測るには、決算短信のサマリー表には載っていない「独自の指標」を計算する必要があります。
ここでは例として、ブリヂストンの重要指標である「調整後EPS(本業の稼ぐ力)」を算出させます。
この手法を使えば、一過性の損失で表面上のEPSが下がっている場合でも、「本業は成長しており、実は買い時である」といった隠れた真実を見抜くことができます。
【実行】独自指標算出用プロンプト
以下のプロンプトは、ブリヂストンの事例をベースにしています。
他社を分析する場合は、URL と 企業名 を対象企業のもの(特に決算短信PDFが一覧で並んでいるページのURL)に書き換えて実行してください。
これまでの指示をすべて無視してください。
あなたは厳格な証券アナリストです。
指定した公式サイトのIRページから「決算短信」を読み込み、以下のデータを抽出して表形式でまとめてください。
### 【参照ソース】
* **対象企業:** ブリヂストン
* **URL:** https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/result/
* **制約:** 上記URLにある「決算短信(PDF)」のみを使用すること。推測や他のサイトの情報は一切含めないでください。
### 【データの抽出ルール】
1. **過去の実績:** 各年度の決算短信「1ページ目(連結経営成績)」から引用。
2. **直近の予想:** 最新の決算短信「2ページ目(連結業績予想)」から引用。
3. **正確性:** 単位(百万円、円など)を正確に表記してください。
### 【計算ロジック(独自指標)】
以下の手順で、決算短信には記載のない「1株当たり調整後営業利益(調整後EPS)」を算出してください。
1. **実質的な発行済株式数の算出:**
`親会社の所有者に帰属する当期利益 ÷ 基本的1株当たり当期利益(EPS)`
※これにより、期中平均株式数を逆算します。
2. **調整後EPSの算出:**
`調整後営業利益 ÷ 上記1で算出した発行済株式数`
### 【出力項目】
* 対象期間:2021年12月期から2025年12月期まで(※最新の会社予想まで)
* 親会社の所有者に帰属する当期利益
* 基本的1株当たり当期利益(EPS)
* EPS算定に使用した発行済株式数(計算値)
* 調整後営業利益
* 1株当たり調整後営業利益(調整後EPS)
### 【分析依頼】
算出された「調整後EPS」の推移を見て、表面的なEPS(当期利益)の動きとどのような違いがあるか、投資家視点で解説してください。
まとめ:AIは「最強の部下」、あなたは「厳格な上司」
本記事では、AIを単なるチャットボットから「厳格な証券アナリスト」へと進化させるための、3段階のプロンプトを公開しました。
-
Step 1: バフェットの基準で、市場から有望株を発掘する。
-
Step 2: 決算書(PDF)を読み込ませ、成長の事実を裏付けする。
-
Step 3: 独自の計算式を与え、隠れた企業価値を深掘りする。
このフローを標準化することで、私たちは感情やバイアスに左右されず、常に一定の基準で高品質な銘柄分析を行うことができます。
ただし、忘れてはならないのは、「最終的な投資判断を下すのは人間である」ということです。
AIは膨大なデータを処理する優秀な「部下」ですが、そのデータが正しいか、そのプロンプトが適切かを判断するのは、上司であるあなたの役割です。
ぜひ、このページをブックマークし、毎回の決算シーズンや日々の銘柄探しの「辞書」としてご活用ください。
【解説】プロンプト進化の「裏側」を知りたい方へ
本記事で紹介したプロンプトは、一朝一夕で完成したものではありません。
数々の失敗(ハルシネーション)と、AIとの対話を繰り返して導き出したものです。
「なぜROEの基準を10%にしたのか?」「AIはどのような嘘をつき、どう修正したのか?」
その試行錯誤のプロセス(検証記録)を知ることで、プロンプトの理解と応用力はさらに深まります。
興味のある方は、以下の検証記事も合わせてご覧ください。
-
【Step 1の裏側】
AIに「バフェット」の投資基準を学習させ日本株を選ばせたら?商社株の「次」を狙う究極のプロンプト
※バフェットの抽象的な思考を、いかにして「7つの数値基準」に落とし込んだか。
-
【Step 2の裏側】
AIの「もっともらしい嘘」を見抜く技術。決算書を読ませてブリヂストン株を正確に分析する方法
※AIが捏造した「架空の成長データ」を見抜き、PDF読込で修正した全記録。
-
【Step 3の裏側】
AIに「バフェット流」の独自指標を計算させてみた。発行済株式数が爆増する「異常」と「たった1つの解決策」
※発行済株式数が爆増する「データの異常」はいかにして起きたか。URL指定の重要性について。
【免責事項】
※本記事は、生成AIを活用した企業分析の手法(プロンプト)を紹介するものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。
※AIが出力するデータは、プロンプトの入力時期やAIモデルのバージョンにより変動する可能性があります。最終的な投資判断は、必ずご自身で一次情報を確認の上、自己責任で行ってください。

